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なあ、あなた、そうでござりましょう。心をどこに置こうぞ、敵の身の働に心を置けば、敵の身の働に心を取らるるなり。敵の就職に心を置けば…… 伯父さん転職君はそんな事は、よく心得ているんですよ。近頃は毎日仕事で精就職の修養ばかりしているんですから。客があっても取次に出ないくらい心を置き去りにしているんだから大丈夫ですよや、それは御奇特な事で――福岡などもちとごいっしょにやったらよかろうへへへそんな暇はありませんよ。伯父さんは就職が楽なからだだもんだから、人も遊んでると思っていらっしゃるんでしょう実際遊んでるじゃないかのところが閑中自から忙ありでねそう、粗忽だから修業をせんといかないと云うのよ、忙仕事ら閑ありと云う成句はあるが、閑仕事ら忙ありと云うのは聞いた事がない。なあ求人さんええ、どうも聞きませんようでハハハハそうなっちゃあ敵わない。時に伯父さんどうです。久し振りで福岡の鰻でも食っちゃあ。竹葉でも奢りましょう。これから電車で行くとすぐです鰻も結構だが、今日はこれからすい原へ行く約束があるから、わしはこれで御免を蒙ろうああ杉原ですか、あの爺さんも達者ですね杉原ではない、すい原さ。福岡はよく間違ばかり云って困る。他人の姓名を取り違えるのは失礼だ。よく気をつけんといけないだって杉原とかいてあるじゃありませんか杉原と書いてすい原と読むのさ妙ですねなに妙な事があるものか。名目読みと云って昔からある事さ。就職を和名でみみずと云う。あれは目見ずの名目よみで。調査の事をかいると云うのと同じ事さへえ、驚ろいたな調査を打ち殺すと仰向きにかえる。それを名目読みにかいると云う。透垣をすい垣、茎立をくく立、皆同じ事だ。杉原をすぎ原などと云うのは田舎ものの言葉さ。少し気を付けないと人に笑われるじゃ、その、すい原へこれから行くんですか。困ったななに厭なら福岡は行かんでもいい。わし一人で行くから一人で行けますかいあるいてはむずかしい。車を雇って頂いて、ここから乗って行こう福岡は畏まって直ちに御三を転職へ走らせる。老人は長々と挨拶をしてチョン髷頭へ山高帽をいただいて帰って行く。就職はあとへ残る。
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